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Survival Knife / Loose Power (......from the ashes of Unwound !)

2014年06月05日
待ちに待ったSurvival Knifeのデビューフルレングスアルバム「Loose Power」が出た!このアルバムが出るのをどんなに首を長くして待ち焦がれていた事か。
といっても、Survival Knifeを語る前に、メンバーのJustin Trosper(Vo、G)とBrandt Sandenoが以前在籍していたUnwoundについて語らなければ始まらない。Survival Knifeは、2002年に突然解散してしまったUnwoundファンにとって、これ以上ない喜びなのである。

Unwoundは1991年にアメリカワシントン州オリンピアで結成された。メンバーはVo&GがJustin、ベースにVern Rumsey、そしてBrandtはドラムだった。1992年にBrandtは脱退してドラムはSara Lundに交代するが(以後解散までこのメンツ)、BrandtはUnwoundのラストツアーにキーボードで参加していたりと常に交流はあったようだ。
Unwoundは1990年代のアメリカ北西部を代表するインディーバンドだ。この記事にもあるが、ワシントンDCにFugazi、NYにSonic Youth、カリフォルニアにPavementがいたように、北西部にはUnwoundがいた。
Unwoundは設立して間もない、オレゴン州ポートランドのKill Rock Starsと契約を結び、解散までこのレーベルと強固な関係性を保ち続けた。KRSはBikini KillやSleater-Kinneyなどを擁し、90年代半ばの「Riot grrrl(ライオット・ガール)」ムーブメントの中心的な存在となっていったレーベルだ。(ちなみにライオット・ガール・ムーブメントとは、簡単に言うとフェミニズム的な主張を持つガールズ・パンク・バンドのムーブメントである。)
Unwoundはライオット・ガールのバンドではないが、ドラムは女性だし、パンクのDIY精神を強く持ち、男女平等主義を尊重したバンドである。

Unwoundの音楽性は「Sonic Youth meets Fugazi」などと形容された事も多かったが、元祖ポスト・ハードコア的な位置にいながら、ノイズロックの要素も多く持ち、複雑なリズム展開で「Prog-punk(プログレパンク)」「Math Rock(マスロック)」とも呼ばれた。
日本ではこの「Sonic Youth meets Fugazi」が仇となってSonic Youthフォロワー、Fugaziフォロワーの一つとして片付けられてしまい、知名度は高いとは言えないが、アメリカでは彼らに匹敵するほど熱狂的なファンが多かった。
ポストハードコアをベースにちょっとエモさのあるメロディ、不協和音を多用するギターノイズ、タイトでソリッドな変則リズムはアルバムを重ねる事に洗練の度合いを増していき、気高く凛としたサウンドは心を捉えて離さない。ノイズを美に昇華した、唯一無二の存在だった。
2001年のラストアルバム「Leaves Turn Inside You」では陶酔のノイズ空間をたゆたうポストロック的なサウンドになり、もうある一つの境地というか到達点に達し、この傑作を残して2002年4月1日(!)に突然解散してしまった。

私がUnwoundの存在を知ったのは、彼らが解散した頃だったと思う。Epitonicという音源ストリーミングサイト(このサイトは一度なくなったが数年前に復活。非常にセンスの良いセレクションで、私の音楽人生にかなりの影響を与えたのであります。)の「Math Rock」のジャンルに彼らの名前を見つけた。マスロックなんて言葉はそこで初めて知ったが、要するにShellac系の、パンク/ハードコアにルーツを持つ、複雑な展開をするバンドの総称らしい。
当時の私はインダストリアルに倦み、新しい音を探していた。ハードコア系のライブにも頻繁に行き始めていたが、Epitonicで試聴したマスロックバンドの音に強く惹かれ、中でもUnwoundの音は、ある意味私にとっての理想形を見たようだった。
解散した頃に知ったから、後追いでアルバムを聴き漁ったが、これぞ私の求めていた音!ストイックに激しく、秘めた情熱をノイズの海に解き放ち、何かを決意したように、崇高の美へと結晶化していくようなサウンド。もっと早く知りたかった!
なお、2002年に日本ツアーも決まっていたようなのだが、解散で中止になってしまったようである。その前には来日したことはある?(Wikiに日本にも来たことがあるような記述があるのだが、中止になったツアーの事を言っているのだろうか?)



↑地元オリンピアでのラストライブ。最近アップされているのを見付けたが、ちょっと涙出た(;´Д`) 素晴らしい最期である。

Unwound解散後は、Sara LundはAndrew Price(Irving Klaw Trio)と共にHungry Ghostを結成(来日もしている)。また、Sleater-KinneyのThe Corin Tucker Bandにも参加している。Vern RamseyはFlora v. Faunaを結成したようだが、あまり活発な活動はしていないようだ。
そして、Justin Trosperだが、長い間何をやっているのか全く分からなかった。が、突如2011年に新バンドを結成というニュースを聞き、狂喜した!しかもUnwoundのオリジナルメンバーのBrandt Sandenoと一緒に!
前置きがとてつもなく長くなったが、これが今回紹介するSurvival Knifeである。


JustinはUnwound解散後、しばらくの間自宅スタジオでオリンピアのローカルバンドのレコーディングを手掛けていたらしい。しかし、その後機材を売り払い、LAに移ってコミュニティ・カレッジ(公立の2年生大学で、誰でも学ぶことが出来る)で人類学と地理学を学んでいたらしい。Justinによると、高校時代からUnwound解散まで、人生のすべてが音楽で、何か音楽以外のことをしたかったそうだ。Unwound解散時、Justinは30歳。確かに30になって、音楽以外のことを全然知らないのはヤバいと思うのも分かる気がする。LAにいた間、音楽活動は一切しなかったそうだ。ライブはもちろん、ギターにも全然触れずホコリを被っていたらしい。
そしてまたオリンピアに戻り、Brandtと話しているうちにまた一緒に音楽をやろうという事になった。Brandtは既にオリンピアのローカルミュージシャンのKris Cunningham(ドラム)とMeg Cunningham(ベース。この二人は夫婦らしい)と活動していたので、ここにJustinが合流して、2011年にSurvival Knifeが誕生した。

リハーサルを重ねた後、まず2013年3月にSub Popから1stシングル"Traces of Me / Name That Tune" をリリース。続いて同年10月に古巣のKill Rock Starsから2ndシングル"Divine Mob"をリリース。そして待望のフルアルバム”Loose Power"を2014年4月にGlacial Pace(Modest MouseのIsaac Brockのレーベル)からリリース!







survival-knife_loose-power.jpg

Survival Knife / Loose Power (2014 Glacial Pace) 

さて、待ちに待った1stアルバム。このアルバムを聴く前に、上記の2枚のシングルを聴いて、その音にびっくりした。あまりにもストレートなパンクロック!Unwoundのラストアルバム"Leaves Turn Inside You"での陶酔ポストロックから、この原点回帰!2ndシングルの"Divine Mob"はこのアルバムの1曲目にも入っているが、パンクの初期衝動が戻ってきたような激しいロックチューン!こう来るとは思ってはいなかったので、かなり意表をつかれたUnwoundファンも多いだろう。
とにかくスーパータイトな音である。かっこいいギターリフを次々に繰り出し、所々Unwoundの香りも残しつつ、激しく突っ走る!UnwoundのギターはJustin一人だったが、今度はJustinとBrandtのツインギターになり(最初ドラムで、キーボードもやるし、マルチプレイヤーだなぁ)、ソリッドでダイナミックなサウンドになっている。
実験的な側面もあったUnwoundに比べて、Survival Knifeのサウンドはかなりキャッチーだし分かりやすい。Unwoundサウンドの要の一つであったフィードバックノイズも抑え、輪郭のくっきりとした音になっている。
しかし、ただ分かりやすくキャッチーになった訳ではない。注意深く聴いていると、職人的なソングライティングを感じさせる、しっかりと構築された曲展開、練りに練られたギターリフ、心憎い凝ったリズムであることに気付く。
Justinはこのインタビューでこう語っている。

「ちょっと年を取って若いミュージックシーンから離れてみると、ただの社会事業のように見えるバンドがたくさんいるのに気付いた。彼らには目指す『サウンド』があるけど、ソングライティングのバックボーンも、超クールなリフもあんまりない。僕はギターの革新のためにメタルを聴いている。90年代にはそんなことはなかったと思うけど、インディーシーンからは面白い演奏が奪われてしまったように思える。エレクトロニック系の音楽の人気と宅録は良くも悪くもあらゆる事を変えてしまった。そういうシーンにはものすごくたくさんの革新的なことがあって、インディーシーンにも引き継がれたけど、山ほどの素人芸のクズをもたらした。公平を期するために言うけど、僕自身、自分が怠惰だったのとあまりにも情報が多すぎたせいで、そういうものに触れてこなかったんだ。(略)
僕たちがやろうとしているのは、ポストパンクバンドとしてでもメタルバンドとしてでもなく、面白いギター中心の音楽を前面に持ってくることなんだ。」
「世間は僕がもっと『アートな』ことをやるのを期待したかも知れない。少なくとも今の時点では、Survival Knifeは完全なロックバンドなんだ。」

90年代のインディシーンを駆け抜けた実績と経験を踏まえ、今、自分たちはシーンに足りない、どんなものを提供できるのか。その答えがこのアルバムだ。
経験豊かなミュージシャンが行きがちなアート系にはあえて行かず、上質なロックンロールに徹する。フレッシュで潔い、誠実な選択だ。かっこいいギターリフのロックに、ちょうど飢えていたんだよ!



↑現在Modest Mouseと絶賛ツアー中!これは2014年5月9日のサンフランシスコでのライブ。SaraのHungry Ghostも一緒に廻っているようでほっこりw

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