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「生活と芸術 - アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」@愛知県美術館

2009年07月20日
昨日、愛知県美術館まで「生活と芸術 - アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」という美術展を見に行ってきた。これ、長い間ずっと待ってた展覧会だったのだ。去年のお正月の新聞(朝日)に、「本年度の朝日新聞社の主催美術展」みたいなのが出てて、それにこの展覧会のことが出ていたのだが、東京、京都(確か)、名古屋と巡回するので名古屋でやるのは1年半後(^^; あ~、長かったけど待った甲斐があった!ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館の所蔵品を中心にした、非常に立体的な展示だった。

アーツ&クラフツとかこの辺は私の非常に得意な分野なのだ。かつてラファエル前派やアール・ヌーヴォーにはまったので、この二つをつなぐアーツ&クラフツは避けては通れない芸術運動なのであった。

「アーツ&クラフツ」とは、19世紀後半にイギリスで起こった芸術運動で、思想家・批評家のジョン・ラスキンの思想に端を発し、デザイナーのウィリアム・モリスが中心となって広がっていった。
産業革命後のイギリスは、大量生産による粗悪品に溢れ、環境は悪化の一途をたどっていた。そんなひどい環境の中、ラスキンは中世の職人のように、手仕事による芸術性の高い品を作ることが重要と考え、中世のような同業者によるギルド(組合)を提唱した。
この思想に感銘を受けたモリスは、仲間の芸術家らと共にギルドを組織し、「用」と「美」が一致した芸術性の高い装飾品を制作し、それらに囲まれた精神的に豊かな生活を目指した。
モリスと共に活動したのは、ラファエル前派の画家のエドワード・バーン=ジョーンズや、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティなどで、画家の彼らはステンドグラスの原画を担当したりした。モリスは壁紙やタペストリーのデザインなどに秀でていた。

モリスは新妻のジェインと新婚生活を送る家を造ることにし、友人の建築家フィリップ・ウェッブに設計を依頼。内装はバーン=ジョーンズやロセッティが担当し、シンプルで周囲の自然と一体化した理想の家「レッド・ハウス」が誕生した。赤レンガの質感を生かしたこの家は、アーツ&クラフツのシンボルとなった。
この経験を生かし、彼らは「モリス・マーシャル・フォークナー商会」という共同経営のインテリア会社を設立。美しい壁紙などはロンドンで人気を博し、ビジネス的にも成功。

モリスの妻ジェインはラファエル前派のミューズで、数多くのロセッティの絵のモデルを勤めている。「宿命の女性(ファム・ファタル)」を体現する存在としてラファエル前派の画家たちを魅了した。ロセッティとは長い間不倫関係で、モリスを悩ませ続けた。(ロセッティの妻のエリザベス・シダルも彼らの不倫関係に悩み、阿片中毒になっていった。最後は阿片のオーバードーズで死亡。まぁこの辺のことはラファエル前派のくくりで)

とまぁ私生活では悩みもあったが、とにかく仕事中毒だったモリスは成功し、晩年は美しい装飾と装丁の手刷りの本の出版に着手。「ケルムスコット・プレス」と名づけられたこの出版事業も成功を収めた。

会場にはモリスとロセッティが借りた別荘「ケルムスコット・マナー」の室内を再現していたが、とても居心地の良さそうな部屋だった。家具は職人の手仕事によるシンプルかつ重厚なもので、部屋にはどことなく聖職者の部屋のような雰囲気も漂っていた。装飾は非常に美しいんだけど、ストイックで清潔感が感じられるからかな。すごく几帳面な感じも。これは真面目なモリスの人柄が反映されているのかも。実際、彼らは教会の装飾も数多く手がけている。
自然を題材にしたモリスの壁紙は本当に美しく、こんな壁紙の部屋だったらすごくリラックスできそう。

アーツ&クラフツはイギリスのグラスゴーやヨーロッパ各地に広がっていき、それぞれの地で独創的な発展を遂げた。この辺になるとアール・ヌーヴォーのくくりで語られるものが多くなる。
会場には各地の作品が展示されていた。私は個人的にグラスゴー派のチャールズ・レニー・マッキントッシュが大好きで、彼の背もたれの長~い特徴的な椅子も展示されていた。
アール・ヌーヴォーの所蔵で知られる飛騨高山美術館にはおしゃれな「マッキントッシュ・ティールーム」があって、ここで飲んだお茶は最高だった♪この美術館はものすごくおすすめ。ミシュランガイドでも三つ星かなんからしい。

ウィーンではクリムトらが前衛的な芸術家グループ「分離派」を結成し、ここ出身のヨーゼフ・ホフマンが職人技術の復興を目指し「ウィーン工房」を設立。ホフマンやコロマン・モーザーによる椅子や食器、アクセサリーなどが展示してあった。ホフマンのカトラリーはめちゃめちゃモダンなデザインで、今でも十分刺激的。

さらに日本では柳宗悦らの「民芸運動」に発展。無名の工人が生み出した生活用具に素朴な美を見いだした。彼らの収集した民衆的工芸品も展示してあった。棟方志功もこの系列なのね。
ハイライトは柳宗悦や河井寛次郎らが共同で設計した「三国荘」の部屋の再現で、これは一見の価値あり(写真はこちら)。随所に朝鮮風のモチーフも取り入れられて、和洋折衷の興味深い部屋だ。

ということで、モリスの業績が世界各地に伝搬し、日本の民芸運動に連なる様子を重層的に展示してあって、とてもよい展覧会だった。
モリス商会の商品は手がかかりすぎていて非常に高価だったので、結局は一部の富裕層にしか手が届かず、すべての大衆に向けて美しい生活の実現を目指していたモリスの理想とはちょっと違う結果となったが、「用の美」という思想が世界各国に広がっていったのは感動的だ。
日常生活で使うものほど、美しいものでなければならない。これは決して華美なものを使うというのではなく、実用性と美しいデザインの両方を兼ね備えた優れたものを使い、豊かな生活を送る。これは現代の北欧デザインにも通じる。

昨今の不況で、世間は「とにかく安いものを」という方向性に走りがちだ。そんな中で、「美しい生活」を思い出させる、非常に今日性のある企画だったと思う。私自身も最近は家計が厳しいので100円ショップのものをよく買ってたりとか、小さい子がいるからインテリアどころではなかったが、はっと目を覚まされるような思いがした。ちょっと身が引き締まったような。


ところで、むか~し大学生の頃にイギリス一周旅行をしたのだが、その時にヴィクトリア&アルバート美術館にも行ってるんだよね。でもあの頃はまだ無知でアーツ&クラフツなんか知らないアホだったので、入り口付近にあった衣装の展示しか見てこなかったのが、今となってはものすごく悔やまれる。ここはビアズリーのものもたくさんあるし、もう一回行って来たい。
イギリスの美術館や博物館って、カフェがすごくいいんだよね。スコーンみたいなボリューム満点の素朴なお菓子がいっぱいで、とってもおいしくて、しかも安い。もちろん紅茶も絶品。イギリスでは駅のスタンドで飲むような紅茶もおいしかった。

この展覧会に行ったら、またイギリスに行きたくなった。懐かしいなぁ。
あ、私ねぇ、スコーンにはちょっと自信があるのだ♪よく小洒落た「英国風」を名乗るティールームでスコーンを出すけど、ピンポン玉くらいのちっこいのだったりでがっかり。本場のはもっとでっかいのだ。最低でも直径6、7cmくらいはある。でさぁ、そういう店のは「マフィンかよ」って言いたくなるような変にふわふわした歯触りだったり。本場のは結構堅めでカリッとしてる。で、横に「オオカミの口」と呼ばれる裂け目が入ってるの。私、これを作れるのよ~ん♪
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Comment
久々にアカデミックな気分♪
ともこさん:
久しぶりに美術館に行ったので、アカデミックな雰囲気がなんか新鮮でした(笑)。最近は「生活密着」みたいな感じだったからな(^^;
「いかん、志を高く持たねば!美意識高く生きねば!」と反省。

学校でこういうのを学べるなんていいな~。こんなんのレポート書け、って言われたらいそいそ書いちゃう♪法学部なんて行かなきゃよかった。今の仕事に全然役立ってないし(^^;
会場でもメモしながら見ている大学生くらいの若者が結構いました。

私は日本の「いかにも民芸調」っていうのはなんかもっさりしたデザインなのであんまり好きじゃないんだけど、朝鮮の白磁とか扉のデザインとかはすっきりとしてていいですね。「三国荘」の扉はかっこよかった。

会場ではヴィクトリア&アルバート美術館の、モリスのテキスタイルデザインを使ったグッズがいろいろ売られてたんだけど(ベッドカバーとかバッグとかいろいろ)、スコップとかじょうろとかのガーデニンググッズがあったのには思わず笑ってしまいました。さすがイギリス。でもモリス柄の熊手とかかわいかった♪

この夏はあと「ノリタケデザイン100年の歴史」展を見に行く予定です。
http://www.nagoya-boston.or.jp/exhibition/list/noritake-200904/outline.html
前にノリタケの森に行ったとき、デザイン画の展示をもっとすればいいのに、と思ってたんだけど、これがドバッと見られるらしい♪この展覧会も全国を巡回してきて、地元の名古屋でフィナーレみたいですね。
名前間違えました(汗)

失礼いたしました~~!!
懐かしい~

なんかデザイン史のレポートを思い出してしまいましたよ~~~。

そうそう、わたしも雑然といいデザインって、何やろ?と思ってた時に、この辺をならったので、まさにユリイカ~~!(なんのこっちゃ?)と思ったのを覚えてます。

家の近所に日本民藝館があるので、又行ってみようかなあ?

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