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『都と京』/酒井順子 著

2009年05月17日
千年の都、京都。
東京なんかよりもず~~~っと長い間都会だったこの街の「常識」みたいなものに、前から興味があった。
以前、「京都では、誰かがものをくれると言ったら7回断らなければならない」というのを聞いて、なんだかものすごく納得したと同時に、長い長い年月の間に極度に洗練された人間関係を垣間見た気がした。そして、私だったら絶対この街には住めない、とも思った。旅行だけだったらいいけど。

昨年の秋に私も京都に一泊で旅行に行ったのだが(この記事この記事この記事)、その時に「まさに京都人の態度!」というのに出くわした。

京都にはアメリカから友人が来るので会いに行ったのだが、先斗町の湯豆腐屋さんに現地集合、ということになった(合計8人)。どんなお店か分かりやすいようにぐるなびのページのURLをメールしておいたので、みんなその地図のページをプリントアウトしてきていた。ぐるなびの地図ページにはクーポンが同時に載っているので、せっかくだからと「ワンドリンクサービス」をお願いした。私たちの面々にはアメリカ人のダンナさん2人もいて、一応全員ウーロン茶をお願いした。
でも、メニューを見ているとゆずのお酒とか「和」な感じのドリンクが載っていたので、ダンナさんズはこれもオーダーしたいと。
私たちのテーブルに付いたのは、小意地の悪そうな(笑)「いかにも京女」という感じの初老の女性。彼女にサービスドリンクとは別に、このゆず酒などを注文すると、小馬鹿にしたような表情を浮かべ、「まずはさっきのウーロン茶から」と一蹴されてしまった。へ?ウーロン茶はタダだけど、ゆず酒はちゃんとお金払うのに。お姐さん、せっかくの注文、チャラにしちゃっていーんですか?

彼女としては、「ちゃんと京のやり方を守ってくれまへんと困りますさかいに~(テキトー京言葉)。これだから田舎もんはいややわぁ」(←京都以外はアメリカも何もかも全部田舎)、という態度だったのだろう。
これに近い接客態度を、私はパリでも受けたことがある。大学生の時、イギリス一周の帰りにちょっとパリに寄ったのだが、街のケーキ屋さんでたどたどしい注文をしたときに、店員のねーちゃんにこういう顔をされた。同じような場面は、『ビバリーヒルズ青春白書』でドナがパリに短期留学したときのエピソードにもあったので、私は思わず「そうそう、あるあるある!!!」と至極納得。
京都人とパリ人はよく似ているとしばしば言われるが、どちらも自分の街が世界一歴史と文化で優れていて、自分の街以外は全部田舎、と思っている点で似ているのだろう。

と、まぁ京都でそんな場面に遭ったのだが、このお店の名誉のためにも言っておくが、お料理はとっても美味しかった。ダンナさんズにも「Good choice!」と喜んでいただけた♪2千円以下のランチで、いかにも京都っぽい湯豆腐コース、というのはなかなかない。
ああいう「これだから田舎もんは・・・」という接客は、多分京都のどこに行ってもあるのだろう(笑)。


・・・・・・・ということで、前置きがすごく長くなってしまったが、そんな体験もあって京都のそういう常識とか感覚的なものに興味が増していたところに、新聞の書評に酒井順子の「都と京(みやことみやこ)」という本の文庫が載っていた。そう、あの賛否両論で社会現象にもなった「負け犬の遠吠え」の著者である。
書評によると、京都と東京の鋭い比較文化エッセイ、ということなので、これこそまさに私の読みたかった内容だ!と本屋に走った(なかなか見つからなかったので大変だったが)。

酒井順子の本を読むのはこれが初めてだが、30を過ぎてからなんだかものすごく京都にはまってしまい、以後ずっと通い続けているらしい。
彼女は東京生まれ東京育ち(荻窪辺りらしい)で、西荻窪生まれの私と結構育った環境が似ているので(私が育ったのはもっと西の方だけど)、彼女の視点は比較的私と近い。だから、「うん、なるほど!」と膝を打った箇所がいくつもあった。

この本は単行本の文庫化だが、言葉、料理、節約、贈答、祭り、神仏、大学、若者、敬語、女、などの観点から、京都と東京を比較している。
中でも「ほ~」と思ったのが「贈答:おためとお返し」の項。京都の贈答文化は、それはそれは複雑で大変らしい。
京都では結婚祝いを結婚披露宴会場に持っていくなどということはせず、式より前に新郎or新婦の自宅に直接持っていくのが正式らしい。しかも、その金封は結納屋さんで揃えた結婚祝いセットと共に塗りのお盆に載せて袱紗(ふくさ)をかけて風呂敷で包み、大安のよき日の午前中に、きちんとした格好で訪問して届けるらしい。届ける方もめんどくさいが、迎える側は知り合いの数だけこの儀式をするわけだし、結婚前の休日は本当に忙しいらしい。
で、お祝いをいただいたら、速攻でお返し。これはお祝いの1割を現金でその場で返す、というのにびっくり(「おため」と言うらしい)。
「おため」は結婚祝いに限らず、旅行のお土産などをもらってもその場で返す。とにかく「手渡し」、もらったら絶対その場で返す、ということにこだわる。
これに対して東京の場合は、結婚祝いのお返しは後日宅配だし、旅行のお土産は「今度自分が行ったら何か買ってこよう」程度。おごられても、こっちが特に好意を持っている相手でなければおごられっぱなしでも平気。
濃厚な双方向文化である京都に対し、一方的なものでもかまわない東京、という点になるほどと思ったのであった。

他の項目も「なるほどね~」と思うところが多々あり(件〔くだん〕の「田舎」の項目とか)、平明な文章ながら、なかなか鋭く深い比較文化論。京都人というものがずいぶんと理解できたような気がした。

とても面白く読めたので、後日「負け犬の遠吠え」も買ってみた。これは社会現象になっただけのことはあり、パワフルな面白さ。これについては後ほど書こうと思う(今更ですが)。

「都と京」、京都に興味がある人は読んで損はない本だ。おすすめ。

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Comment
いけず~
Michiさん:
どうもお久しぶりです。
あの湯豆腐屋さんのいけず姐さん(笑)、確かに「なんじゃこりゃ」と思ったけど、リアルで「ザ・京都人」な態度が見られたので面白かったです。ドリンクは結局ウーロン茶だけでした。

この本にも、東京では「お客様は神様」であるのに対し、京都では「店が客を選ぶ」(「一見さんお断り」みたいな)と言うスタンスで、すべての客の機嫌を取る訳ではなく、「底引き網漁」的な東京に対し、「一本釣り」的なサービスの京都とあったのには「なるほど~」と思いました。
だから東京のサービスは誰に対しても最大限の歓迎でもって行われるけど、これは常に人の流れが流動的な東京だから可能なのであって、京都のような所だと下手すると雑魚が入ってくる可能性もあって、常連さんにとってはいいサービスとは言えない。だからどちらの方が優れたサービスか、と一概には言えないですね。

現代の日本の若者の間では「空気が読めない(略して「KY」)」ことが最大の罪悪で、今の子供たちは常に友達の顔色を見ながらびくびくしているような感じらしいですが、京都こそまさに空気を読まなくてはならない街で、KYな奴は「もっさい」と言われてしまうそうです(この本には「KY」という言葉は出てこないけど)。
柔らかな京言葉でチクチクとやり合う「いけず合戦」なんて、そりゃ転勤族の奥さんには辛いだろうなぁ。

確かにこういうのはめんどくさいけど、長い年月の間に磨き抜かれた「柔らかナイフ」な京言葉とか勘所の働かせ方なんかは、100年や200年なんかの歴史では太刀打ちできないすごさがあって、自分がその中にいない限りは感心してしまいます。
東京は物言いも直截的でシンプルだし、いちいち裏を読まなくてもいいから住んでて楽ですね。全国から人が集まる街は、こうでなくては回らないんでしょう。
これに対して京都は大人の街っていうか、老獪な感じ。千年も都会をやってれば、そりゃ老獪にもなるわなぁ。

こんなコラム見つけました↓
http://www.onozomi.com/book_kyoto/column/column3_top.html
京都人、おそろしや~(^^;

話変わって、負け犬ブームが来たのは私が結婚した直後だったので、タッチの差で負け犬呼ばわりされる事は防げました(笑)。「負け犬の遠吠え」を読むと、私は本来あっち側の人間なんだなぁ、とつくづく思います(笑)。なんかの間違いで「勝ち犬(この本の定義上)」になったけど。
どうもこんにちは。お久しぶりです。
そうそう、あのお店、料理は良かったけどもあの無礼な婆さんにはむかつきました。旦那にきいてみたら言葉わかんなくてもやっぱり変な態度だと感づいていたんだって。北海道(かなりフレンドリー ^^)からほとんど直行だったのでなおさら。
でもそんなの気にしないでお料理は楽しめましたよ。で、結局ドリンクは無しだったんだっけ?(笑)。覚えてない・・・。
パリも行きましたけどサービスはどこでも良かったです。でもイタリアでで嫌な店員(女)がいました。どこにいってもたまに変な人はいるんでしょうね。品のある人だったら相手が間違ったことをしてもそれをさりげなくフォローするのが一流だと思うんですけどね~。
だからね、旦那は東京でのサービスに感激していましたよ。どこに行ってもにこやか&丁寧で。

古いしきたりとか礼儀って続けるべきものなんでしょうけど、東京育ちでアメリカ生活がさらに長い私にとってはそういうの面倒くさいとか思ってしまいますね・・・。ガサツな人間になるまいと努力してるんですが。

「負け犬」の本、興味あります。あとで、レビューしてくださいね。では、また!

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