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「生活と芸術 - アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」@愛知県美術館

2009年07月20日
昨日、愛知県美術館まで「生活と芸術 - アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」という美術展を見に行ってきた。これ、長い間ずっと待ってた展覧会だったのだ。去年のお正月の新聞(朝日)に、「本年度の朝日新聞社の主催美術展」みたいなのが出てて、それにこの展覧会のことが出ていたのだが、東京、京都(確か)、名古屋と巡回するので名古屋でやるのは1年半後(^^; あ~、長かったけど待った甲斐があった!ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館の所蔵品を中心にした、非常に立体的な展示だった。

アーツ&クラフツとかこの辺は私の非常に得意な分野なのだ。かつてラファエル前派やアール・ヌーヴォーにはまったので、この二つをつなぐアーツ&クラフツは避けては通れない芸術運動なのであった。

「アーツ&クラフツ」とは、19世紀後半にイギリスで起こった芸術運動で、思想家・批評家のジョン・ラスキンの思想に端を発し、デザイナーのウィリアム・モリスが中心となって広がっていった。
産業革命後のイギリスは、大量生産による粗悪品に溢れ、環境は悪化の一途をたどっていた。そんなひどい環境の中、ラスキンは中世の職人のように、手仕事による芸術性の高い品を作ることが重要と考え、中世のような同業者によるギルド(組合)を提唱した。
この思想に感銘を受けたモリスは、仲間の芸術家らと共にギルドを組織し、「用」と「美」が一致した芸術性の高い装飾品を制作し、それらに囲まれた精神的に豊かな生活を目指した。
モリスと共に活動したのは、ラファエル前派の画家のエドワード・バーン=ジョーンズや、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティなどで、画家の彼らはステンドグラスの原画を担当したりした。モリスは壁紙やタペストリーのデザインなどに秀でていた。

モリスは新妻のジェインと新婚生活を送る家を造ることにし、友人の建築家フィリップ・ウェッブに設計を依頼。内装はバーン=ジョーンズやロセッティが担当し、シンプルで周囲の自然と一体化した理想の家「レッド・ハウス」が誕生した。赤レンガの質感を生かしたこの家は、アーツ&クラフツのシンボルとなった。
この経験を生かし、彼らは「モリス・マーシャル・フォークナー商会」という共同経営のインテリア会社を設立。美しい壁紙などはロンドンで人気を博し、ビジネス的にも成功。

モリスの妻ジェインはラファエル前派のミューズで、数多くのロセッティの絵のモデルを勤めている。「宿命の女性(ファム・ファタル)」を体現する存在としてラファエル前派の画家たちを魅了した。ロセッティとは長い間不倫関係で、モリスを悩ませ続けた。(ロセッティの妻のエリザベス・シダルも彼らの不倫関係に悩み、阿片中毒になっていった。最後は阿片のオーバードーズで死亡。まぁこの辺のことはラファエル前派のくくりで)

とまぁ私生活では悩みもあったが、とにかく仕事中毒だったモリスは成功し、晩年は美しい装飾と装丁の手刷りの本の出版に着手。「ケルムスコット・プレス」と名づけられたこの出版事業も成功を収めた。

会場にはモリスとロセッティが借りた別荘「ケルムスコット・マナー」の室内を再現していたが、とても居心地の良さそうな部屋だった。家具は職人の手仕事によるシンプルかつ重厚なもので、部屋にはどことなく聖職者の部屋のような雰囲気も漂っていた。装飾は非常に美しいんだけど、ストイックで清潔感が感じられるからかな。すごく几帳面な感じも。これは真面目なモリスの人柄が反映されているのかも。実際、彼らは教会の装飾も数多く手がけている。
自然を題材にしたモリスの壁紙は本当に美しく、こんな壁紙の部屋だったらすごくリラックスできそう。

アーツ&クラフツはイギリスのグラスゴーやヨーロッパ各地に広がっていき、それぞれの地で独創的な発展を遂げた。この辺になるとアール・ヌーヴォーのくくりで語られるものが多くなる。
会場には各地の作品が展示されていた。私は個人的にグラスゴー派のチャールズ・レニー・マッキントッシュが大好きで、彼の背もたれの長~い特徴的な椅子も展示されていた。
アール・ヌーヴォーの所蔵で知られる飛騨高山美術館にはおしゃれな「マッキントッシュ・ティールーム」があって、ここで飲んだお茶は最高だった♪この美術館はものすごくおすすめ。ミシュランガイドでも三つ星かなんからしい。

ウィーンではクリムトらが前衛的な芸術家グループ「分離派」を結成し、ここ出身のヨーゼフ・ホフマンが職人技術の復興を目指し「ウィーン工房」を設立。ホフマンやコロマン・モーザーによる椅子や食器、アクセサリーなどが展示してあった。ホフマンのカトラリーはめちゃめちゃモダンなデザインで、今でも十分刺激的。

さらに日本では柳宗悦らの「民芸運動」に発展。無名の工人が生み出した生活用具に素朴な美を見いだした。彼らの収集した民衆的工芸品も展示してあった。棟方志功もこの系列なのね。
ハイライトは柳宗悦や河井寛次郎らが共同で設計した「三国荘」の部屋の再現で、これは一見の価値あり(写真はこちら)。随所に朝鮮風のモチーフも取り入れられて、和洋折衷の興味深い部屋だ。

ということで、モリスの業績が世界各地に伝搬し、日本の民芸運動に連なる様子を重層的に展示してあって、とてもよい展覧会だった。
モリス商会の商品は手がかかりすぎていて非常に高価だったので、結局は一部の富裕層にしか手が届かず、すべての大衆に向けて美しい生活の実現を目指していたモリスの理想とはちょっと違う結果となったが、「用の美」という思想が世界各国に広がっていったのは感動的だ。
日常生活で使うものほど、美しいものでなければならない。これは決して華美なものを使うというのではなく、実用性と美しいデザインの両方を兼ね備えた優れたものを使い、豊かな生活を送る。これは現代の北欧デザインにも通じる。

昨今の不況で、世間は「とにかく安いものを」という方向性に走りがちだ。そんな中で、「美しい生活」を思い出させる、非常に今日性のある企画だったと思う。私自身も最近は家計が厳しいので100円ショップのものをよく買ってたりとか、小さい子がいるからインテリアどころではなかったが、はっと目を覚まされるような思いがした。ちょっと身が引き締まったような。


ところで、むか~し大学生の頃にイギリス一周旅行をしたのだが、その時にヴィクトリア&アルバート美術館にも行ってるんだよね。でもあの頃はまだ無知でアーツ&クラフツなんか知らないアホだったので、入り口付近にあった衣装の展示しか見てこなかったのが、今となってはものすごく悔やまれる。ここはビアズリーのものもたくさんあるし、もう一回行って来たい。
イギリスの美術館や博物館って、カフェがすごくいいんだよね。スコーンみたいなボリューム満点の素朴なお菓子がいっぱいで、とってもおいしくて、しかも安い。もちろん紅茶も絶品。イギリスでは駅のスタンドで飲むような紅茶もおいしかった。

この展覧会に行ったら、またイギリスに行きたくなった。懐かしいなぁ。
あ、私ねぇ、スコーンにはちょっと自信があるのだ♪よく小洒落た「英国風」を名乗るティールームでスコーンを出すけど、ピンポン玉くらいのちっこいのだったりでがっかり。本場のはもっとでっかいのだ。最低でも直径6、7cmくらいはある。でさぁ、そういう店のは「マフィンかよ」って言いたくなるような変にふわふわした歯触りだったり。本場のは結構堅めでカリッとしてる。で、横に「オオカミの口」と呼ばれる裂け目が入ってるの。私、これを作れるのよ~ん♪
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「シリーズ アメリカ近代写真のパイオニア エドワード・ウェストン」展(+ 「江戸の誘惑」展)@名古屋ボストン美術館

2006年08月17日
「オウムガイの貝殻」 「ピーマン」

1月のアンセル・アダムズ展、5月のアルフレッド・スティーグリッツ展に続き、シリーズ第3弾のエドワード・ウェストン展名古屋ボストン美術館まで見に行った。今回のウェストンは、私の最も好きな写真家なので一番楽しみにしていた。

エドワード・ウェストン(1886-1958)は当初はその当時流行していたソフトフォーカスの絵画風写真から出発し、そういう作風でかなり高い評価を受けていたが、やはりスティーグリッツの「ストレート写真」に衝撃を受けて転向した。
彼は非常に鮮明な静物のクローズアップ写真や、造形的なヌード写真などで有名である。特に「オウムガイの貝殻」(上の左側の写真)や「ピーマン」(右側の写真)は彼の代表作だ。私が彼の作品を初めて見たのはいつ頃だったか覚えていないが、この「ピーマン」には相当な衝撃を受けた。ありふれたピーマンが、こんなにメタリックに撮れるということに驚愕した。そしてどこか官能的な雰囲気も漂う。彼は物体を肉体のように、肉体を物体のように撮る。ヌード写真(下の写真)は後に彼の妻となるカリスを写したものが多いが、体の部分をオブジェのように撮っている。それに比べてこのピーマンは、まるでメイプルソープの黒人メイルヌードのようだ。貝殻や野菜をこんなにエロティックに撮る人を私は他に知らない。
中期はこういったモダニズムを極めた作風だったが、後期になると荒涼とした自然の中で見付けた造形的な物体や、砂漠の中の風景を撮るようになる。「ホット・コーヒー」(一番下の写真)のように、砂漠の中に忽然と現れたコーヒーカップというシュールな風景。彼は当時盛り上がりを見せていた、シュールレアリスム運動にも鋭く反応していたのだろう。

今回の展示は枚数もかなり多く、ウェストンの軌跡がよく分かり、見応えがあった。彼の写真集は持っているので家でも見られるんだけど、やっぱりこうしてズラッと並ぶとどういう写真家なのかよく理解出来る。精緻なクローズアップやこれ以上ないほどの絶妙なフレーミング。ありふれたものを全く別のイメージに見せてしまう技術。写真とは一瞬を切り取るもの、と言う言葉がまさに実感出来る偉大な写真家だ。
今回のシリーズ展のような試みは日本ではあんまり見たことがなかったので、まさにこの辺の写真家が大好きな私には非常にありがたい企画だった。

「ヌード」


「ホット・コーヒー」


Edward-Weston.com
アーティストガイド - エドワード・ウェストン

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さて、上記のウェストン展は「オープンギャラリー」での展覧会で、この美術館としてはあくまでもサブ。メイン会場の「ボストンギャラリー」では「ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展 江戸の誘惑」展をやっていた。私はウェストン展を目的に行ったんだけど、どうせだからこっちもついでに見てみた。この辺は特に詳しくはないけど、前々から浮世絵には興味を持っていたので。私はなぜか知らないけどラインを強調した作風のものに惹かれる傾向があるのだが(だから印象派は大嫌いだ)、浮世絵はその極み、っていうか原点のようなものだし。
浮世絵というのは通常は版画だが、時に特別な注文などにより、浮世絵師は肉筆の一点ものの作品も描いた。明治時代に日本にやってきたアメリカ人医師、ウィリアム・ビゲローは、菱川師宣や喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重などの数多くの肉筆浮世絵を買い集め、そのほとんどをボストン美術館に寄付した。

一点ものの肉筆ということで、屏風や掛け軸に描かれたものが多かったが、やはりその主題は庶民の行楽風景とか吉原の花魁などが多い。で、やっぱ美人画が多数を占めるのだが、私はあんまりそういうものには興味がない。興味を引かれた、と言うかやっぱすごいと思ったのは葛飾北斎だ。その迫力は群を抜いている。伝説の妖怪や獅子、鳳凰、龍などが今にも飛び出て動き出しそうな勢いだ。「鏡面美人図」という美人画もあったが、これは鏡に顔を映している女性の後ろ姿で、非常に斬新な構図。
浮世絵にはあまり知識もなかったけど、北斎が私の好みに合うらしい、と言うことが分かったのが収穫だった。寄っていってよかった。

名古屋ボストン美術館は赤字で存続が危ぶまれていたらしいけど、この日は大入りだったぞ。ボストン美術館から所蔵品を貸してもらう代わりに、あっちに何十億も寄付をしているらしい。それが赤字なので市で問題になったらしいが、寄付金を減らすことで一応存続出来たらしい。私は名古屋に来て一番通ってるのがここなんだけどな。私好みのものをやってくれることが多いのかな。
「だから赤字なんだよ」とダンナさんに言われた(笑)。そりゃそーだ(^^;

「シリーズ アメリカ近代写真のパイオニア アルフレッド・スティーグリッツ」展@名古屋ボストン美術館

2006年05月03日
「三等船室」名古屋ボストン美術館でやっている「シリーズ アメリカ近代写真のパイオニア」の第2弾、「アルフレッド・スティーグリッツ」展を見に行った。第1弾のアンセル・アダムス展も1月に見に行った(その記事はこちら)。
スティーグリッツはアメリカ近代写真の父と言われている人で、被写体をそのままありのままに撮る「ストレート写真」を始めた偉大な写真家である。彼のストレート写真に影響を受けて、アダムスやエドワード・ウェストン(第3弾は彼の展覧会)など続々と優れた写真家が出現した。
彼はニューヨークを拠点に大都会の風景やポートレートなどを精力的に撮り、またギャラリー「291」を開いて新進の写真家の作品を展示したり、セザンヌやピカソなどヨーロッパの前衛絵画の紹介にも努めた。後に彼の妻になるジョージア・オキーフの作品もこのギャラリーで紹介した。

今回の展示では、初期のヨーロッパ留学時の作品、「フォト・セセッション(写真分離派)」結成時のストレート写真、オキーフを始めとする肖像写真、後期の雲を写した抽象的な表現の作品など彼の作風の変遷を辿っていた。
やはり白眉なのはオキーフの肖像写真で、彼女のキリッとした魅力的な雰囲気をよく捕らえていた。それから、一昨年ニューヨークのグッゲンハイム美術館で感激したオキーフの手を撮った写真もあった(その時の記事はこちら)。雲の写真は抽象画のようで、雲もこういう風に撮れるのかと新鮮な思いだった。ニューヨークの建物を撮った作品も良かった。
また、「スティーグリッツ・サークル」と呼ばれる彼の周辺の写真家の作品も展示してあった。柔らかな作風で中流階級の生活を撮ったものが多かったが、私はやっぱシャープな表現のポール・ストランドの写真が一番良かったな。
でも、この他の写真家の作品が結構多くて、もっとスティーグリッツの作品を見たかったような気もした。

今回は出産後初めて行った展覧会だな。次回のウェストンは私の一番好きな写真家なので非常に楽しみ。

「ジョージア・オキーフ:肖像」 「ジョージア・オキーフ:肖像」

「シリーズ アメリカ近代写真のパイオニア アンセル・アダムス」展@名古屋ボストン美術館

2006年01月26日
「ハコヤナギ」金山の名古屋ボストン美術館でやっている「シリーズ アメリカ近代写真のパイオニア」の、第1弾のアンセル・アダムス展を見に行った。第2弾はアルフレッド・スティーグリッツ、第3弾は私の最も好きな写真家の一人、エドワード・ウェストンだ。
名古屋ボストン美術館はボストン美術館との提携美術館で、自身のコレクションは持たず、ボストン美術館のコレクションを取っ替え引っ替え展示している所である。今回のシリーズ展もボストン美術館所蔵の写真だが、こういう展覧会を待っていた。この辺の写真家の作品をまとめて見られる機会って日本ではあんまりないような気がするし、比較的人気のあるアダムスはともかくウェストンの展覧会というのは待ちに待っていた。
19世紀末はフィルムに手を加えたソフトフォーカスの絵画風写真が全盛だったが、スティーグリッツは現実をそのまま記録した、フィルムに手を加えないで現像する「ストレート写真」を提唱した。彼に続くウェストン、アダムスはそれを継承し、アメリカ近代写真のパイオニアとなった。私は彼らの斬新な構図と、シャープで鮮明な作風、美しい白黒の階調の作品が大好きだ。

「モノリス」さて、アンセル・アダムス(1902~1984)は、アメリカで最も愛されている写真家の一人で、ヨセミテの雄大な自然の写真で有名である。彼も当初は絵画風の作風だったが、スティーグリッツの「ストレート写真」との出会いをきっかけに、シャープで精緻な作風に変化していく。
彼の作品は自然を撮ったものがやはり一番魅力的で、荘厳さ、自然への畏怖、というものを生き生きと映し出している。特に切り立った崖とか、上へ上へ伸びる大木といった垂直方向のもののダイナミックさは素晴らしい。あと樹皮の表面や雲などの陰影も非常に美しく捕らえている。彼自身の自然に対する驚きと感動が素直に伝わってくる。

アダムスといえばヨセミテ、という認識だったが、他にもネイティブ・アメリカン(プエブロ・インディアン)の魅力にはまっていた頃の作品とか、ウェストンと共に大型カメラを用いた鮮明な写真を信念とする写真家集団「f64」を結成した頃の植物のクローズアップ写真などは初めて目にした。また、後期になると抽象絵画のような作風に変化していったが、こういうのも初めて見た。

アダムスの足跡を丁寧に追った分かりやすい展示で、かなりたくさんの写真が見られて満足満足♪やっぱこういう鋭いフォーカスの写真っていいな。
今回のアダムス展は4/2までで、第2弾のスティーグリッツ展は4/8から6/7、第3弾のウェストン展は6/17から8/27まで。とりあえず今回のアダムス展は出産前の最後の展覧会になりそう。スティーグリッツとウェストン展は、ダンナさんにちょっと赤ちゃん預けて見に行ってこよう。

■Ansel Adams Offisial Site
http://www.anseladams.com/

■名古屋ボストン美術館
名古屋市中区金山町1-1-1 Map
Tel. 052-684-0101
地下鉄名城線・JR・名鉄 金山総合駅南口より徒歩1分
http://www.nagoya-boston.or.jp/

レオノール・フィニ展@名古屋市美術館

2005年12月03日
051203_6.jpg名古屋市美術館まで「レオノール・フィニ展」を見に行ってきた。アルゼンチン生まれの「幻想とエロスの異色の女性画家」ってことだそうで、今回初めて知った。こういう「幻想とエロス」みたいなタイプは5年くらい前だったらまさにストライクゾーンだったのだが、正直言ってここ何年かは興味を失いつつある。今はこういうイメージ先行型よりももっと抽象っていうか、造形自体の面白さの方に食指が動く(今の音楽に対する興味もこれと同じような傾向だ)。とは言え、名古屋でこういうメインストリームから外れたタイプの展覧会を見られる機会は少ないので、とにかく行ってみた。チラシで使われてた作品もよさげだったし。

この展覧会は6月から7月にかけて渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムでもやってたものらしく、全国を巡回してるのかな?確かにいかにもBunkamuraっぽい企画だ。Bunkamuraでやる展示ってかなり好みのタイプが多くて、東京に住んでたときはしょっちゅう行ってたなぁ。あそこでやる企画は、毎回名古屋にも輸出してくれないかなぁ。名古屋に来てから、ほんとにこういうのに心底飢えている。Bunkamuraは展覧会の後の「ドゥ・マゴ・パリ」での食事もいいんだよね~。海外の美術館って併設カフェやショップのレベルが高いけど、Bunkamuraは日本ではかなりイケてる方だと思う。NADiffもあるし。騒々しい渋谷で、あの一帯は大人なムード♪(ってか、渋谷にも長いこと行ってないから地理を忘れつつある・・・^^;)

さて、話を本題に戻そう。レオノール・フィニは1907年アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ。裕福なアルゼンチン人の父とイタリア人の母の間に生まれるが、母は暴君的な夫から逃れて、1歳のフィニを連れて故郷のトリエステ(北イタリア)に戻る。反抗的で学校から放逐されたりするが、芸術的な環境で育ち、長じてミラノに出て、パリに拠点を移す。パリではシュルレアリスト達と親交を深め、彼らの展覧会に出品もするが、アンドレ・ブルトンと折り合いが悪くなり、次第にシュルレアリスムから離れる。
独創的で強烈な個性を持つ彼女は、その美貌もあってパリの社交界の花形だったが、奔放で過激な姿勢はタブー視されることも多かった。多才な彼女は第2次大戦後は多くの舞台の衣装と舞台デザインや、宝石デザインなども手がける。また、何編か小説も書いている。

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↑初期の作品「守護者スフィンクス」。彼女はラファエル前派に強い影響を受けているそうだが、確かに色彩の使い方とか主題の選び方は近いものがあるかも知れない。

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↑シュルレアリスム時代の「骸骨の天使」。彼女の前期の作品は背景が暗く沈んでいるものが多い。

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↑「鉱物の対話 」。中期に突然画風が変わり、この頃はその色彩や質感から「鉱物の時代」と呼ばれる。彼女は緑をよく使うが、確かにこの緑は植物のナチュラルな緑というよりも、冷たくてちょっと毒々しいベリルの緑だ(私も鉱物大好き)。
関係ないけど、私は緑という色は健康的なんでずっと嫌いだったが、それを覆したのがType O Negativeのアートワークだ。緑という色は、黒と合わせると突然毒々しく人工的な色彩になる。生涯ずっと緑と黒に取り憑かれているPeterは、私にこのことを気付かせてくれた。これは私にとってちょっとした転換点だった。私自身は、ダークカラーを背景に緑と紫を組み合わせた配色が大好きだ。この配色はすごく夢幻的な雰囲気がする。

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↑「真実のいたずら」。コルシカ島にアトリエを構えた頃から、色彩に変化が現れる。ダークな背景が多かったのが、一転して明るく淡い色彩に変わる。そして主題もエロティシズムを強く表現したものになるが、それは男性主導のエロティシズムに対する反発を感じさせ、女性としてのエロス、レズビアニズムも厭わないエロティシズムが窺われる。

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↑オペラ「タンホイザー」より“ヴィーナス”の衣装。彼女の布地の色の合わせ方は、めちゃめちゃ私の好みだ。彼女は当時の新素材も積極的に使った。
また、彼女は仮面もよく制作し、それを自ら身に着けて社交界に現れた(一番上の写真)。

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↑フィニのポートレート。ちょっとパティ・スミスに似ている。

フィニの作品は、主題や造形的に云々というよりも、その色彩感覚に強く惹かれるものがあった。濁りのない微妙な色彩を巧妙に組み合わせる手腕は特筆ものだ。この色の使い方は、やはりラファエル前派の色彩感覚に通じるものがある。時々、ミレイの「オフィーリア」や、ウォーターハウスの「ヒュラスとニンフ達」を思わせる色遣い(と構図)があった。この色遣いは、幻想的で淡々としたエロスを盛り上げる。
ここの所原色でパキッとした感じの作品を見ることが多かったけど、久し振りにこういう色彩もいいもんだなと、象徴主義にドップリはまった頃を懐かしんだ。

■フィニの作品はこちらでいくつかまとめて見られます。↓
http://www.leonor-fini.com/

「ネイチャー&アート ガウディ|ミロ|ダリ」展@豊田市美術館

2005年08月16日
豊田市美術館

豊田市美術館まで、「ネイチャー&アート ガウディ|ミロ|ダリ」展を見に行ってきた。この展覧会は愛・地球博のスペインパビリオンとの共同主催で、カタルーニャ地方出身のガウディ、ミロ、ダリの3巨匠を作品を集めて展示したものである。私はこの3人の大芸術家の中ではミロが一番好きだ。

展覧会のテーマはカタルーニャ地方の自然が彼らの芸術に及ぼした影響、というものなので、会場に入るとまずカタルーニャの自然風景を映した映像が上映されていた。そこを抜けると作品の展示会場へ。場内を三等分した形になっていて、そこに3人のコーナーがそれぞれある。正直言って、展示作品数はそれほど多くない。ちょっとボリューム的には物足りなかったが、展示の仕方がとても洗練されていた。文字をプリントした薄い幕を垂らしたりと、ディスプレイデザインがいろいろとかっこいい。ミロは絵画と彫刻、ガウディは建築物の断片(タイルなど)や室内装飾品(ベンチなど)、ダリは絵画があった。

やっぱミロの作品が一番好きだな~。彼の鮮やかな色遣いがとても好きだ。この色彩感覚は、やはり太陽いっぱいのカタルーニャの自然の賜物だろう。このカラフルな色に溢れた画面を、あの独特の黒くて細い線が引き締める。
ガウディはそれほど好きな建築家でもないのだが、やっぱり実物を見ると有無を言わせぬ吸引力がある。生き物のような線を持った家具など、一度見たら忘れられない。彼の活躍した時期にも重なるからか、やはりアールヌーヴォーのエッセンスもちょっと感じられる。木材に鉄の脚を持ったベンチがかっこよかった。
ダリの作品は「いかにもダリ」みたいなのが少なかったのでちょっと迫力不足。

この展覧会と一緒に、ヤノベケンジという人の展示(「ヤノベケンジ キンダガルテン」)もあった。金属製の巨大な造形物が展示してあって、マンモスとかロボットとか、ちょっとユーモラスな表情を持っている。「キンダガルテン」というタイトルの通り、未来の幼稚園のような雰囲気だ。この人はかつては閉塞的な雰囲気の作風だったらしいが、子供が生まれたことによって未来を見据えるポジティブな作風に変化したらしい。

他に常設展もあったが、やっぱ数が少ない。クリムトとかエゴン・シーレもあったが、あんまり所蔵作品は多くないのかな。海外の美術館は常設展で客を呼ぶのに、日本の美術館は企画展に頼りがちだ。まぁ予算がどんどん削られて購入費用がないのだろうけど、見応えのある常設展が見たい。トヨタ、景気いいんだからもっと寄付しろ(笑)。

さて、もちろんここに来たのは展覧会が目的だが、この美術館の建築物を見たかった、というもの大きな理由だ。この建築を手がけたのは、ニューヨークの新しいMoMAも手がけたことで有名な谷口吉生だ。去年の9月にMoMAに行ったが、ちょうど改装中でクイーンズの移転先の方。オープンに間に合わなかったのが残念。
で、豊田市美術館の建築は非常に端正なデザインで、今回ここに来て一番感銘を受けたのが建築物自体だった。外壁はスレートを使っていてクールな雰囲気(一番上の写真)。空間を贅沢に使った設計で、外光が燦々(さんさん)と入るようになっている。直線と無彩色が基本なのだが、ガラスを多用していてとても軽やかで明るい雰囲気。

豊田市美術館

↑2階のテラス部分。鏡と原色の立体が並んでいて、映り込む色がとてもきれい。

豊田市美術館

テラスの前には大きな池がある。何とも言えない開放感があって、非常に気分が良かった。
また、テラスに面して素敵なレストランがあるのだが、並んでいたので入らず。池を見渡せるのでとても良さそうだったのだが、残念。

10月から森美術館などでもやっていた「ニューヨーク近代美術館巡回建築展 谷口吉生のミュージアム」展もやるようだ。谷口建築の美術館で見られるというのはかなりポイント高い。
でも、ここ、やっぱ遠いわ~。今回は車で行ったけど、豊田市駅から結構ありそう。徒歩15分って書いてあるけど、もっとかかりそう。まぁ夏じゃなければ歩けるかな。ここは全体的にモダンアート系の展覧会が多いみたいなので、ちょくちょく来たいんだけど、展示作品のボリュームをもっと増やしてくれ。わざわざ豊田まで来るんだから。
あと、ミュージアムショップは書籍がかなり充実。グッズももう少しあればなぁ。でも名古屋周辺のミュージアムショップとしてはレベルは高めよん。

■豊田市美術館
愛知県豊田市小坂本町8丁目5番地1 Map
Tel. 0565-34-6610
開館時間:10:00-17:30(入場は17:00まで)
休館日:毎週月曜日
名鉄豊田市駅より徒歩15分(名古屋市内からは鶴舞線の直通電車で豊田市駅まで行ける)
http://www.museum.toyota.aichi.jp/


おまけ:
豊田市はご存じの通り「世界のトヨタ」の大本拠地で、やっぱり街はトヨタ関連の工場ばかりだ。名前にトヨタが付いてなくても、大抵はトヨタの下請け工場だったりするらしい。東京にいた時は「トヨタ」のイメージもあってもっと開けてるのかな、と思っていたが、実際に行ってみると工場と畑しかないような所だった。ちょっとびっくり。先日の大合併で周辺の町村も豊田市になったので、山間部もたくさんある。香嵐渓のある足助町も豊田市になった(香嵐渓についてはこちらの記事参照)。
トヨタのお膝元だけあって、やはりこの辺の人は専ら車で移動する。なので駅前は当然のごとく空洞化。でも最近は駅前中心部の活性化に力を入れているらしい。

クリエイターズマーケット@ポートメッセ名古屋

2005年06月19日
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クリエイターズマーケットに行ってきた。場所は名古屋港の金城埠頭にあるポートメッセ名古屋。開通してまだ日の浅いあおなみ線で、名古屋駅から25分くらい。
クリエイターズマーケットとは、要するに東京のデザインフェスタの名古屋版と思ってもらえればいい。規模は当然DFよりも小さいが、オリジナルの雑貨や服などを作る人が多数出展するアートイベントである。CMは今回で第12回だそうだ。2日間に渡って開催され、年2回のペースらしい。

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↑ポートメッセ名古屋。金城埠頭の駅に着くと、名古屋に来てから最も多く「そういう感じの」「いかにもな」「トンガリ系」の人々に遭遇。
当日券800円を買って、会場に入る。ダーッと広い会場に、無数のブースが並ぶ。ファッション、インテリア、雑貨、アート系などのカテゴリーに分かれていて、端の方にはステージがあり、その周囲をフードコートが囲む。
各作家のブースとは別に、招待作品の展示コーナーやアート系学校の展示スペースも。

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↑招待作品の「妄想紙」という可動式ペーパーオブジェ。かなり大きなもので、その緻密な細工には気が遠くなりそうだ。この紙の遊園地は、実際に部分的に動く。

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↑こちらは今回のメインビジュアルを作った松岡ミチヒロ氏の作品。東急ハンズ賞など数多くの賞を受賞している人らしい。

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↑こちらも招待ブースの「coppers早川」という人の作品。銅と真鍮を使った1点もののオブジェ。愛知万博にも作品展示しているらしい。

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↑名古屋芸術大学(名古屋造形芸術大学だったかも)の展示スペース。最近エアライングッズが俄然注目されているが(確かにデザインがクールだもんね~♪)、これもその流れと思われる。

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↑個人のブースで目を引いたのが、入り口すぐのこの「屑鉄工房」のもの。舟をかたどった展示方法は非常に目立っていた。

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↑屑鉄工房で売っていたランプ。ここはこういったボルトやナット、その他いろいろな屑鉄を使ってユニークなオブジェを作っていて、金属フェチの私はいきなり激しく反応!このランプはとってもキュート。他に目玉オヤジみたいなのもあった。

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↑買ったものその1。「work-m」という神戸のガラス作家の人のブースで買ったペンダント。色遣いがとっても綺麗で涼しげで、思わず衝動買い。900円だった。この人は「フュージング」という技法のガラスを作っていて、ほとんどの作品が透明なガラスに綺麗な色の四角いガラスをはめ込む、というスタイルだった。他に箸置きや一輪挿し、メモホルダーなど夏にぴったりな素敵なものがたくさん。

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↑買ったものその2。「Sereno」というブランドのアルミのドリンクボトル。別にドリンクボトルなんて全然使わないんだけど、色遣いが気に入っちゃってこれも衝動買い。1500円。様々な媒体で活躍しているカトウシンジ氏という人がデザインしている。このブースは非常に繁盛していて、商品もかなり売れていた。他にトートバッグやお弁当箱などもあって、どれも洗練された色彩。

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↑なんだか妙に気に入っちゃったのが、この「eichi+eichi」というデザインユニットのブース。オリジナルの「黒猫シャノ」というキャラクターがとても魅力的。この写真は「嵐が丘」「若きウェルテルの悩み」「アルジャーノンに花束を」「赤と黒」などといった有名な作品のブックデザインを、「シャノ」が登場するオリジナルデザインで表したミニポスター。レイアウトや色遣いが非常に洗練されている。他に絵本やレターセットなども売っていた。

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↑「シャノ」が妙に心揺さぶるので、結局「あしながおじさん」のデザインのポスターを買ってしまった。1000円。ちょっと高かったかな~?

他に何となくカメラを向けにくい雰囲気だったので写真は撮れなかったけど、気に入った作家さんを挙げたいと思う。(そういうブースからは連絡先をもらっておいた)

滝沢締七転八倒
自宅の猫5匹の写真のポストカードなど。単なる「うちの猫かわいいでしょ~♪」的なものではなく、とてもいい表情を捕らえていて非常に魅力的。「シャノ」もそうだけど、やっぱ猫に飢えているのか?(笑)この人は大阪の人のようだが、東海地方だけではなく、関西からの出展がかなり目立った。

iron-works Q
ボルトを使った、ユーモラスな「ボルトマン」(この記事の一番上のコラージュ写真の、右上のもの)が非常に表情豊か。特に「入浴」とか「漫才」なんていうのがすごくいい感じで、くすっと笑えるキュートなものだった。

TYUTYUNAI
ここもやはりエアライン系のデザイングッズ。ポップ感覚いっぱいのTシャツやマグカップなどを売っていた。シンプルなデザインでとても気に入った。

SHOP MAJOP
とぼけていてキュートなキャラクターが魅力的なTシャツ屋さん。ボディのTシャツの色もかなりこだわってるみたいで、一ひねりある色遣い。Tシャツ買えばよかったかな。

plantish-goods pretty plant "R"
味わいのあるアイアンワークスが心惹かれる。ハンガーとかお店の什器などを作っているようだ。

glass clock Leccia
ガラスで作った掛け時計やアクセサリーがとても魅力的。ここも「フュージング」という技法を使っているらしい。色がとても綺麗。

以上紹介したのは私の趣味丸出しで、「金属&ガラス&猫」って感じのばっかだ(笑)。どれも素敵なデザインばかりなので、是非クリックしてリンク先へどうぞ。ネットで買えるものもあるよん♪

ということで、面白いブースがいっぱいで非常に刺激的だった。ファッションショーやヘアカットショー、バンドのライブなんかもやっていた。フードコートにはサマソニなんかで見かけるようなエスニック屋台がいくつかあった。
作家さんから直接買うから、全般的にどれも値段は安め。個性的なグッズを安く買えるので、とってもお値打ちよ~♪私もなんか作ってみたいな~、なんて思ってしまうような、楽しいイベントだった。
次回は12月だそうなので、また行ってみようと思う。

それにしても、とにかく歩き回ったのでものすごく疲れた(^^; ブースが無数に並んでるから、「あれ、さっき見たあのブースってどこだったっけ?」と探し回ったりして、体力を使い果たしてしまった。今度からは、めぼしいブースはあらかじめ場内図に印を付けておいて見て回る、という方法にしようとしみじみ思った。

■クリエイターズマーケット
http://www.creatorsmarket.com/

「'30s GRAPHICS-アメリカン・アール・デコのグラフィックデザイン」展@国際デザインセンター デザインミュージアム

2005年04月09日
デザインミュージアム名古屋市は「デザイン都市宣言」なるものをしているらしく、デザイン関係には力を入れているらしい。そういう訳でデザイン関係の人材育成を目的として、栄ミナミ(矢場町)のナディアパークというビルには国際デザインセンターというものがある。ナディアパークにはLOFTや紀伊國屋書店、「クレアーレ」という高感度ブティック街のようなものも入っているので、一般的にはこっちのイメージが強く、国際デザインセンターの存在すら知らない人も多い。
まぁそんな感じで一般的には影の薄い施設ではあるが、デザインミュージアム(左の写真)とギャラリーがあり、その他レクチャーや研究開発などをやってるらしい。きっとものすごい赤字だろうが、名古屋市からの助成金でしのいでいるのだろう。

そのデザインミュージアムでやっている「'30s GRAPHICS-アメリカン・アール・デコのグラフィックデザイン」展を見に行った。ナディアパークにはよく来ているが、実際このミュージアムに来たのは私もこれが初めて。思った通り、土曜なのにガラガラ(^^; でも、展示内容はなかなか良かった。

今回の展覧会は、このミュージアムが収集・所蔵しているアメリカン・アールデコのポスターを中心に、この時代のインダストリアルデザインも含めた展示である。私はアールヌーヴォーやロシアアヴァンギャルドなど、ポスター芸術というものに特に興味があるのだが、アールデコのというのはあまりよく知らなかったので、今回はいい機会だ。

アール・デコというのは20世紀初頭のデザインムーブメントで、19世紀末に流行したアール・ヌーヴォーの曲線的なデザインとは対照的に、直線的で幾何学的なデザインが特徴的である。ヨーロッパからアメリカに波及していったが、ニューヨークの摩天楼は一番分かりやすいこの様式の建築だ。
第一次大戦で戦場となって疲弊したヨーロッパと違い、国土が戦場になることがなかったアメリカは、大戦後未曾有の反映を誇り、アール・デコの文化が花開いた。狂乱の20年代、ジャズ・エイジ、断髪の女性。この時代は、現代の消費社会の原型が出来た時代だった。

特に女性の新しいライフスタイルが出来た時代で、それまでは固いコルセットとロングスカートに押し込められ、従属的な態度を強いられていたのが、短く髪を切り、昼はオフィスで仕事をし、夜は動きやすい軽いドレスを着て、化粧をしてタバコを吹かしカクテルを楽しんだ。そうした「新しい女性」のマーケットが誕生し、現代まで続くファッションブランド(シャネルetc.)・化粧品ブランド(ゲラン、コティ、メイベリンetc.)が次々と登場した。
また、それまでは装身具は上流階級のものだったが、普通に働く女性も身に着けるようになり、こうした女性でも買える値段のものが求められた。この時代は新素材が次々と開発された時代でもあったので、プラスチック製のアクセサリーなど、コスチューム・ジュエリーが誕生した時代でもあったのだ。

という訳で、今回の展示では初期のメイベリンのマスカラ(当時は今みたいなスティック状ではなく、小さな箱に入っていた。多分筆で塗るのだろう)とか、ゲランの香水のポスター(かっこいいデコのデザイン!)、ビーズ刺繍の短いドレス(「シカゴ」や「コットンクラブ」を思い起こしてください)、幾何学デザインのプラスチックジュエリーなんかもあって面白かった。

さて、今回の展覧会の中心であるポスターに話を移そう。この時代は印刷技術が飛躍的に向上し、カラー印刷も普及していった。娯楽が上流階級だけのものから一般大衆へも広がっていった時代なので、消費者への直截的なマーケティングツールとして、ポスターの役割はこれまでになく重要になった。向上した印刷技術を駆使し、大胆なレイアウトデザインと印象的な色彩のポスターが数多く生まれた。
交通機関の発達に伴い、「一般大衆の観光旅行」という娯楽が生まれ、国内の様々な観光ポスターが作られた。30年代にはシカゴ万博やニューヨーク万博も開かれたので、万博関係のポスターも特徴的だ。

今回の展示で、私が一番強く感銘を受けたのは「WPA」のポスターだ。30年代の大恐慌で、ルーズベルト大統領がニューディール政策を打ち出したが、事業促進局(WPA=Works Progress Administration)の支援プログラムのポスターがめちゃめちゃかっこいいのだ。大胆で力強いレイアウト、インパクトの強い色彩。同じ時代で、政府主導のものだからだと思うが、ロシア・アヴァンギャルドのプロパガンダポスターに近い匂いを感じた。この時代のアメリカのポスターデザインには知識がなかったが、「WPA」という新たなジャンルを発見出来て大収穫だった。

ニューヨーク万博のポスター

↑ニューヨーク万博の公式ポスター

RUR

↑WPAのポスター。このごっついイラストレーション!かっちょい~!

Training in Art

↑これもWPAのポスター。この驚くほど斬新なレイアウト!たまりません。

アール・デコは装身具やインテリアなど身の回りのものの実例は結構知っていたのだが、ポスター、特にWPAに関しては今回初めて知ったので、来て良かった。
それと、装身具や小物の展示はものすごい仕掛けのメカニカルな装置で展示してあって(数個の大きな箱(中に展示品が入っている)がエレベーターみたいに動く)、デザインに興味のない人でも楽しめそう。

ミュージアムといってもそれほど大きな所ではなく、ほとんどギャラリーなのだが、この時代の空気を多面的に見せてくれていて、展示内容はとてもよかった。
ロフトと同じフロアにあるのだが、ここの存在はロフトの客には全く無視されていたのが惜しい。もっと客を呼ぶ工夫をしないと。お役所仕事ではなく、商業的に頑張んないと。

■国際デザインセンター デザインミュージアム
名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク・デザインセンタービル4階 Map
Tel. 052-265-2106
開館時間:午前11:00~午後8:00(入館午後7:30まで)
地下鉄名城線 矢場町駅から徒歩5分
http://www.idcn.jp/
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「オキーフとその時代」展@名古屋ボストン美術館

2004年12月25日
鹿の頭蓋骨とぺダーナルホテルをチェックアウトしたあと、同じビル内の名古屋ボストン美術館でやっている「オキーフとその時代-レーン・コレクション アメリカンモダニズム」展を見に行った。
名古屋ボストン美術館はアメリカのボストン美術館と提携していて、あちらの所蔵品を貸してもらって展示するという方式の美術館である。ここにはちょうど一年前、デューラー展を見に来たことがある。なんか毎年クリスマスはボストン美術館じゃん(笑)。

今回の展覧会は、ボストン美術館のレーン・コレクションからのもので、ジョージア・オキーフの作品を中心にアメリカン・モダンアートの源流を探る、という趣旨である。私はオキーフが大好きである。9月にニューヨークに行った時もオキーフの作品を見て、画集も買ってきた。今回はオキーフの絵は5枚くらいだが、やはり生で見る彼女の絵はほんとに色彩が美しい。特に「鹿の頭蓋骨とぺダーナル」(左の絵)は、乾いたニューメキシコの澄んだ空気を感じさせるような、とても清らかな色彩だ。私がオキーフの絵で好きなのは、やっぱり彼女の色遣いだ。この絵に代表されるような後年のニューメキシコのアトリエから見える風景でも、この前の作風である花を大きく拡大したものも、抽象画も、オキーフの色遣いは独特の濁りのない美しさだ。

鉱石から鉄へ他の同時代の画家の作品もたくさんあって、特に気に入ったのはチャールズ・シーラーという人の「鉱石から鉄へ」という作品だ。インダストリアルなモチーフももちろんいい感じだけど、美しい色彩を使って切り絵のように描いていて、なんだかとても心惹かれた。この人の他の作品もチェックしてみよう。

会場にあった解説を読んでいると、アメリカのモダンアートには写真家アルフレッド・スティーグリッツのギャラリー「291」が重要な働きをしていることがよく分かった。スティーグリッツは才能ある画家を発掘して、自分のギャラリーで数々の個展を開いていたそうで、オキーフ(後に彼と結婚)もこのギャラリーで紹介されて知名度が上がっていったそうだ。オキーフとスティーグリッツはこの前のNY旅行の裏テーマだったな。

全体的に展示数はそれほど多くないけど、コンパクトにポイントを絞って明快な展覧会だった。

■名古屋ボストン美術館
名古屋市中区金山町1-1-1 Map
Tel. 052-684-0101
http://www.nagoya-boston.or.jp/

「リキテンスタイン 版画の世界」展@名古屋市美術館

2004年09月28日
名古屋市美術館に「リキテンスタイン 版画の世界」展を見に行った。リキテンスタインはめちゃめちゃ好きって程でもないけど、名古屋でやってくれるこの手の展覧会なら行っておかなくちゃ。名古屋市美術館は伏見(名古屋一のビジネス街)の白川公園にあり、黒川紀章の建築。鳥居など日本の建築要素の引用が各所に見られる。主に20世紀以降の作品中心に収集している。

Fafnir-Dragon II

↑美術館前のカラフルな彫刻はアレクサンダー・カルダーの”Fafnir-Dragon II”

さて、今回のリキテンスタイン展は初期から晩年までの作品を約100点展示していて、彼の作風の流れがよく分かるようになっている。リキテンスタインっていうとあのアメコミみたいな吹き出し入りのがよく知られているけど、こういうタイプのはかなり初期に多いということがよく分かった。これ以降は様々な表現方法を試みていて、私は後期の方が好きだ。

ブラッシュストローク初期の頃はスクリーントーンのようなドットを多用していたが、これが次第に斜めストライプ模様になっていく。
また、60年代の現代アート界では筆の勢い(ブラッシュ・ストローク)を多用する画家が多く、こういう作風の画家ががコピーのように続々と出てきたことにリキテンシュタインは批判的だったらしい。そういう批判も込めて、彼は「ブラッシュ・ストロークを版画で表現する」というタイプの作品を多数作っている(左の絵)。刷ったものに本物のブラッシュ・ストロークを描き加える、というのも多かった。

リキテンスタインはほとんど原色しか使わず、あまり曖昧な色遣いはしない。はっきりくっきりとしたまさに「ポップ」な感じだ。
また、過去の様々な芸術スタイルを引用している事が多い。美術のサンプリングとでも言おうか。印象派やピカソなどのキュビズムをモチーフにした作品は面白かった。こういった様式を大胆に単純化・洗練化して、その本質を鮮やかに表現していた。大胆に単純化された牛の絵はとても良かった。

それから、木材に着色した立体作品はSFMOMAでも見たことがあるが、個人的には彼の作品ではこういうのが一番好きだ。極限まで単純化した形と、鮮やかな色彩のハーモニーがとてもいい。

10月からはジョージア・オキーフ展も名古屋で開催される。NYの気分再現って感じでうれしいわ~♪

■名古屋市美術館
名古屋市中区栄二丁目17番25号(白川公園内) Map
Tel. 052-212-0001
開館時間:
9:30-17:00(入場は16:30まで)
金曜日は、20時(入場は19:30)まで (祝日にあたる場合は除く)
地下鉄東山線・鶴舞線「伏見」下車、5番出口から南へ徒歩8分
地下鉄鶴舞線「大須観音」下車、2番出口から北へ徒歩7分
地下鉄名城線「矢場町」下車、4番出口から西へ徒歩10分
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/
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